2018年04月25日

NO...4912 スピリッツ島 7-序

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68歳で小説を書こうと思い立ちました。そして最初から「同人誌」は故郷・長野県の会に参加したいと考えました。PCで検索して、小島義徳氏が主宰される「0の会」にお願いすることに。ラッキーでした。ここは書くことに意欲的で巧みな皆さんの集まりでしたから。
「スピリッツ島」は、たった一人のきょうだい・弟を20歳で亡くしたわたしが、子たちに「こんな叔父さんがいたんだよ」と伝えておきたくて書いた作品です。
この作品に信州文学賞をいただきました。小さな授賞式に、子と孫たち全員、NY在住の娘夫妻まで参加、前日は皆で湯田中温泉に泊まりお祝いをしてくれました。
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         「スピリッツ島」
               序
 カナダの大陸横断鉄道旅は、バンクーバーからトロントまで三泊四日、週三回夕方五時半に出発する旅である。
 出発一時間ほど前から、ホームにギターを弾きながら歌う歌手と、小さなグラスワインが発売されて、出発祝いの雰囲気を盛り上げる。
(話は前後するが、正月集まった時、今年の夏は、家族みんなでケープコードへ集まり、そこで一週間を過ごそうと子たちが決めた。ここは、NYにいた時、夏を過ごした思い出の地)
 紗枝は、仕事を持つ子どもたちより一足先に日本を出発し、鉄道旅を選択する。カナダ西海岸は初めてなので、バンクーバーに一週間滞在し、この街や花いっぱいの公園があるビクトリアまで足を伸ばしてから、いよいよ大陸横断鉄道に乗る夕方になった。
 列車の一人旅は用心が第一と考えて個室をとった。乗車口は普通列車とは別で値段は二十二万円ほど。ちなみにシーズンオフは七万円ほどだという。
 指定された個室は壁に収納されているベッドと座るところ、それにトイレとトイレの上に洗面台がついている。第一印象は監獄のような殺風景な個室という感じだった。だから乗ってすぐにベッドをセッティングしてもらう。こうすると上等になって、まくらもホテル並みのふかふかなのが二個。厚みのあるベッドすれすれに窓があり、風景が車窓を流れると、いかにも長い旅の始まりという感じで気分が高揚する。
 しばらく部屋にいると、夕食の案内があって食堂車へ。食事は白いテーブルクロスの食卓を囲んで四人掛け。陶器の皿にグラスとおしゃれな感じ。なかなかのご馳走も並んだ。
 そのあと、列車最後尾のラウンジに移動して皆で楽しんだ。ここには飲み物・お菓子・フルーツ類などが常に置かれて自由に手にとることができる。そして、部屋の隅の階段を上がると展望車があり、限りなく広い景色が気持ち良く目に飛び込んで来た。
「どこまで行くんですか?」
 人の良さそうな紳士が紗枝に声をかける。聞くとイギリスからとのこと。
「トロントまで。そこから飛行機でニューヨークの娘の家に行き、一緒にケープコッドまで行きます。日本から他の子たちも来て、そこで家族全員が一週間を過ごす予定です」
 紳士は老婆の一人旅を不思議がって声をかけたようだが、納得したらしく、いろいろ話しながら紗枝の持っているソニーのカメラに興味を示した。ラウンジは乗客で賑やかになる。オーストラリアから来た夫妻は夫の定年退職記念の旅だとのこと。列車には部屋とは別のところにシャワーもついていた。
 翌朝、窯の中に火が燃えているかと思うほど真っ赤な太陽で目が覚める。眠っている間にロッキー山脈を越えて清々しい朝になっていた。
 やがて列車は高原の町ジャスパーに着いた。紗枝はここで下車して二泊三日を過ごす予定にしている。ホテルまで歩いたが大した距離ではなかった。チェックインすると、部屋に荷物を置き、すぐに外へ出る。せっかくの旅なので部屋で休むなどもったいないと思った。

 
posted by akino at 00:17| Comment(3) | カテゴリ無し | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
この作品はよく覚えています。
清々しい涙で読み終えた作品でした。
何度も読み返しましたから。ここでまた再読できるのは嬉しいです。
今日の部分の汽車の旅の描写が1980年に乗ったイギリスからフランス迄の夜行寝台列車に乗ったことを思い出させてくれました。娘と2人で休みました。
明日の連載が楽しみです。
Posted by Unico531 at 2018年04月25日 07:12
色々な経験があきのさんの人生を豊かにしてますね。そうして家族の結束がよく見えてきます。
楽しみに読みます。
Posted by oss102 at 2018年04月25日 15:39
Unicoさん
ありがとうございます。
書き手にとっては、よい読み手をもつことは、なによりの喜びです。よろしく。

Ossさん
今回は子供達に残そうという気持ちがあるので、そのことをプラスしました。毎度読んでいただきありがとうございます。
Posted by あきの at 2018年04月25日 16:27
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