2018年04月08日

NO...4895 二人作りしわが山斎は11-3

      3
 食事を済ませると、茶のみ茶碗を手に居間に戻り、また牡丹を眺める。
 テーブルに眼鏡が二つあるのは、遠近両用は落ち着かないので、在宅の時は用途別にしているためである。
 そう言えば、宇佐美と呑んだ時、彼と眼鏡の話をしたことを思い出す。
「近ごろは本を読むのも億劫になって困ったものだよ」
 と言うから、
「高校時代には二、〇だと威張っていたぞ」
 冷やかすと、そんな時もあったなあと懐かしがった。
「つい最近、眼鏡をつくりなおしたのだがね、縁なしにすると若く見られますよ、そう店員がすすめるので、中身まで若くなるような眼鏡はないかねと言ってやったら、それわぁーと、顔を赤くしていたよ」
 煮魚に箸をつけ身をほぐし口に持っていってから、
「どうだ。若返っただろう。これで恋のひとつもできるというものだ」
 身を乗り出すように、顔を突き出しおどけてみせた。
「宇佐美、実はオレ、その恋をしている――」
 拍子で思わず口を滑らせた。
「ーーーー」
 相手はまさかという顔をする。
「ほんとだ」
 真顔になった。
「こいつめ、うまいことしているなあ〜。でもなあ、深みにはまるなよ。深みにはまって苦労しているやつをオレは知っている」
 手を伸ばして、盃を満たしてくれながら宇佐美はしんみりとした。
「女ができるのは、みんな理解するさ。だが家庭を壊すと、世間的な信用を落とすからな。ほどほどにしておけ。お前には、あんなに甲斐性のある芳乃女史がいるんだからな」
 心配してくれる友に感謝しながら、
「その通りだ。まあ百戦錬磨、仕事で鍛えられている。このくらいのことは、だいじょうぶだ」
 虚勢をはったつもりはない。自信があった。
posted by akino at 00:05| Comment(2) | カテゴリ無し | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
新聞小説を読んでいるようです。
先が読めないので本とは違う楽しみがあります。
Posted by みのりん at 2018年04月08日 10:01
みのりんさん
さて、どうなりますか。楽しんでください。
Posted by あきの at 2018年04月08日 15:03
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